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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)2648号 判決 1998年2月25日

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は控訴人に対し、別紙物件目録記載の不動産について、平成元年九月二五日設定を原因とする大阪法務局堺支局平成七年三月二〇日受付第四二八八号(別紙物件目録一記載の不動産につき)、同四二八九号(同目録二記載の不動産につき)の各根抵当権設定仮登記に基づく本登記手続をせよ。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じて全部被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴人の求める裁判

主文同旨

第二  事案の概要

事案の概要は、原判決記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  判断

一  相続人が明らかでない場合の相続財産法人は、対外的に積極的な活動をなすことを目的とするものではなく、管理清算の便宜上法人とされるにすぎず、被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位にあるものというべきである(最判昭和二九年九月一〇日裁判集民事一五号五一三頁)。そうすると、前記第二、一において述べたとおり、根抵当権設定契約がなされている以上、控訴人の請求は理由があるということができる。

ところで、所定の手続を経てなお相続人が現れなかった場合には、相続財産管理人は清算手続に入ることになるが、その手続には民法九五七条二項の規定により同法九二九条の規定が準用されているところ、同条但書の「優先権を有する債権者」とは、相続開始時までに対抗要件を備えている債権者を指すと解すべきであるから、本訴の控訴人のように相続開始時点において対抗要件を備えていない者については(前記のとおり、本件仮登記は播磨の死亡後になされている。)、改めてこれを求める実益がないといえなくもない。しかし、右実益がないというのも、あくまで相続財産法人が存続し、右九二九条但書が適用される限りにおいてのことにすぎないばかりでなく、抵当権設定契約を結び、抵当権者となった者は、抵当権設定者に対して、その旨設定登記を請求する権利を有しており、もしこれを拒否された場合には、右設定者に対して抵当権設定登記手続請求訴訟(給付訴訟)を提起し、この権利の実現を図ることができるのは当然のことというべきである。

二  よって、控訴人の本件請求は認容すべきであって、これを棄却した原判決は不当であるから、これを取消し、主文のとおり判決する。

(別紙)

物件目録

一 堺市五月町九七番一

宅地 七〇四・四三平方メートル

二 同所九七番地所在

(主たる建物の表示)

家屋番号 三八番

木造瓦葺二階建居宅

床面積 一階 二八三・五三平方メートル

二階 九〇・二一平方メートル

(附属建物の表示)

符号 1

木造亜鉛鍍金鋼板葺平家建物置

床面積 一三・二五平方メートル

受理決定

右当事者間の大阪高等裁判所平成九年(ネ)第二六四八号根抵当権設定仮登記本登記手続請求事件について、同裁判所が平成一〇年二月二五日に言い渡した判決に対し、申立人から上告受理の申立てがあった。申立ての理由によれば、本件は、民訴法三一八条一項の事件に当たる。

よって、当裁判所は、裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定する。

主文

本件を上告審として受理する。

(平成一〇年一〇月一九日 最高裁判所第一小法廷)

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